アースを正しく取る

身近な電磁波対策「アースを正しく取る」

電磁波の本当の意味を知って下さい


電磁波環境研究所
荻野 晃也
1940年富山市生まれ。理学博士。 原子核物理学、原子核工学、放射線計測学、電磁波工学などを専門とする一方で、原子力・核問題・人権・環境問題・電磁波問題などにも物理学者としてかかわっている。
主な著書(共著・監修を含む)
「ガンと電磁波」 (技術と人間)
「あなたを脅かす電磁波」(法政出版)
「高圧線と電磁波公害」(緑風出版)
「死の電流」 (緑風出版)
「電力線電磁場被曝」(緑風出版)
「携帯電話:その電磁波は安全か」(集英社)

1979年秋、私は米国スリーマイル島原発周辺へ調査に行きました。その年の3月末に大事故が発生していたからです。その時、滞在していた友人宅で、興味ある話しを聞きました。

「ホワイトハウス内で、科学者たちが原発事故の放射線被曝問題以外に非電離放射線のことも論議しているらしい」とのことでした。同じ三月に発表されたワルトハイマー論文を巡っての議論だったのです。

「配電線の形状と小児ガン」と題するその論文は、配電線周辺で小児白血病が約三倍にも増加しているという世界でも最初の疫学研究でした。「配電線の形状」を問題にした理由は、磁場が原因なのか水道管を経由して流れ込むアース不良による電流なのかが良くわからなかったからです。

日本でも洗濯機を使用するときに、「アースをキチッと取って下さい」と説明文に書かれていますが、アースが不完全ですと感電する恐れがありますし、微弱であれ身体の中を電流が流れるのですから良いはずがありません。身体には水分が多く、電気が表面を通り易いこともあって、電場よりも磁場の危険性のほうが大きいと考えられてはいるのですが、決して電場が「安全だ」と決まっているわけではないのです。

テレビの表面にホコリが良くつきますが、これは電場の効果で静電気がたまり、ホコリを吸い寄せるのです。テレビに黒い布をかぶせてその前にハツカネズミを置いた北里大の実験結果では、目が充血したり水晶体の繊維構造が崩れたりしていて、電場効果のほうが大きな影響を与えているようです。

目と睾丸には血管が少なく、電導性も低く冷却効果もありませんから、電磁波には一番弱い組織だと考えられているのです。そもそも動物の身体は、微弱な電圧差で制御されているのですから、磁場より電場のほうが悪影響を懸念されて当然なのですが、その様な研究がとても少ないのです。

人の背中はプラス電圧で、手先の指ではマイナス10mV程度の電圧になっています。

つまり、身体全体としては僅かな電場がかかっているわけです。

その途中の上腕で骨折したとしましょう。

そうしますと、マイナス数mVであったその骨折場所の電圧がプラス10mV程度にまで急激に増加し、それから骨の修復を始めるのです。

10日もするとマイナスになり、ゆっくりと骨折前の電圧に戻るのです。

この例から考えても、交流とはいえ100Vの電圧は、身体にとっては大変な高電圧なのです。

ワルトハイマー論文以降、磁場と小児ガンとの関係を調べた疫学研究は、私の調査では62件もあるのですが、その多くは小児白血病の増加を示しています。2003年6月4日に文部科学省のホームページに発表された日本の疫学結果でも、4mG以上の被曝で小児リンパ性白血病が4.73倍に、小児脳腫瘍が何と10.6倍に増加しています。

この様な多くの疫学結果を根拠にして、世界保健機関も2001年10月に、極低周波(つまり60/50サイクルの周波数)の磁場に対して「発ガンの可能性あり」と発表したわけです。勿論、電場被曝の研究もないわけではありません。

有名なのが、1995年のコギール(英)論文です。それを下の表にしておきましたが、20V/m以上の電場被曝で、小児白血病が4.69倍にも有意に増加しているのです。

アースを正しく取る:電磁波被爆と小児白血病

表中の「95%信頼区間」は、「95%の確立で信頼できる誤差の幅」を意味していて、その誤差の下限が、1.0より大きくなる場合を「統計的に意味がある」というわけで「有意」と呼んでいます。

日本の規制値は3,000V/mですから、100分の1以下の電場でも白血病が増えているというのです。職業人を対象とした研究でも電場の効果を示している研究が幾つかあります。

その中でも話題になったのが、1996年に発表されたカナダの電力会社(ハイドロ・ケベック)の従業員の自殺を調査した研究(バリス論文)で、電場被曝の方が自殺率が高く、2.76倍にもなっているとのことです。磁場に比べて電場の方が遮蔽(しゃへい)し易いことは確かですが、それでも日本の電気製品には大きな欠点があります。

コンセントを見ればわかりますが、電気コードが2本になっていて、欧米のように3本足になっていません。アース専用線が用意されておらず、2本足ではどうしてもアースが不十分となり、電場の漏洩が多くなってしまいますし、ビリビリ感電することにもなります。

アースを完全にして漏洩電流をも減らし、更に磁場をも少なくしたような電気製品を使用して、危険な電磁波被曝を減らすように心がけて欲しいと思います。

特に長時間にわたって子供が使用するような電気製品にはその様な注意が大切です。